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北朝鮮は本当に核兵器を放棄するのか


        大阪商業大学総合経営学部教授・経済学博士・中津孝司
 




我が国・日本がロシア,北朝鮮,中国が保有する核兵器の標的となっている客観的情勢にいささかの変化はない。 日本列島全体が核兵器に包囲されている危険な状況が今なお続く。米露両国による核軍縮交渉は行き詰まり,ワシントンは中国に貿易戦争を仕掛ける。 ワシントンと平壌との間で信頼が醸成されているとは言い難い。ホワイトハウスの北朝鮮政策は明らかに間違っている。というよりもむしろ,対露, 対中政策との整合性が著しく欠落していると指摘せざるを得ない。

1.南北首脳会談の連発で舞い上がる愚かなソウル

2018年9月18日の午前10時前,韓国の文在寅大統領一行を乗せた専用機が平壌の順安空港に着陸した。 その直後,北朝鮮の金正恩委員長が出迎え,文大統領と抱擁した。この日の午後4時前,朝鮮労働党本部で1回目の首脳会談が始まった。 翌日の午前10時には百花園迎賓館で2回目の首脳会談が始まり,1時間ほどで終了している。その後,「9月平壌共同宣言」に署名,その全文が公表された(1)
『日本経済新聞』(2018年9月20日号)に掲載された「共同宣言」の骨子は次の通りである。

  • 北朝鮮は東倉里(トンチャンリ)のミサイル試験場と発射台を永久廃棄
  • 米国が相応の措置をとれば北朝鮮は寧辺核施設を廃棄する用意
  • 金正恩委員長が近いうちにソウルを訪問
  • 南北は朝鮮半島を恒久的に平和にするため実践的措置を実施
  • 南北の鉄道と道路をつなげる着工式を年内に実施
  • 離散家族問題の根本的な解決に向けた人道的協力を強化
  • 2032年夏季五輪の南北共同開催誘致へ協力

一読すればわかるように,合意文書では北朝鮮が保有する核兵器や弾道ミサイルを廃棄,放棄することに触れていない。 欠陥文書である。少なくとも国際社会全体にとって,資するべき内容は微塵もない。空虚な美辞麗句が並んでいるに過ぎない。 肝心の非核化を後回しにして,南北融和だけが一人歩きしている。実質的には相互不可侵条約に近い(2)。 北朝鮮が段階的非核化ではなく,無条件で核兵器,弾道ミサイルを廃棄処分し,国際社会によって査察,検証されない限り,目標は達成されない。
木を見て森を見ず。文大統領の外交は朝鮮半島のみに注がれている。対日関係をはじめ,周辺国や主要国への影響が視界に入っておらず,身勝手な外交を展開しているに過ぎない。 韓国内の景気低迷に正面から取り組まなければならないにもかかわらず,北朝鮮融和政策を支持率向上に結び付けようと躍起になっている。 韓国経済の浮揚策を放置して,制裁措置に抵触する対北朝鮮投資を優先させようと野心を燃やす。文大統領は内外の反対を押し切って,四大財閥トップを同行させている。
韓国と北朝鮮の共通因数は反日であろう。一つの民族を錦の御旗として,民族自決のために日本国民が悪用される。双方は反日で共闘する。 日本国民が警戒すべきは反日で中国と朝鮮半島が結託する姿である。韓国は今も竹島上陸で日本を揺さぶる。中国とロシアは制裁緩和に積極的姿勢を鮮明にしている。
北朝鮮は今もって前近代的な独裁国家。実兄殺害も躊躇しない野蛮国家である。首脳会談を重ねるごとに,独裁国家,野蛮国家,テロリスト国家を正当な国家だと黙認することになる。 金王朝の正統性を容認することになる。朝鮮半島統一の際,金一族をどのように処理するつもりなのか。
半島統一には韓国の経済力が不可欠。現在の韓国経済にその実力が備わっているのか。統一となれば,韓国側に莫大な負担が発生する。 脆弱な韓国経済には耐えられない。外国人投資家は韓国から一斉に資金を引き揚げるだろう。そうでなければ,間違いなく経済危機となる。 今は体力を蓄えることに集中すべきである。北朝鮮に秋波を送るのは時期尚早であろう。
朝鮮戦争の後始末も終わってないにもかかわらず,金正恩委員長は体制保証を勝ち取ることに執着する。 また,朝鮮戦争を名実ともに,終結させたとしても,北朝鮮の体制保証や不可侵とは別次元のことである。 金委員長は戦争終結と体制保証が連続すると誤解している。朝鮮半島の北半分は国家としての機能を果たしていない。 北朝鮮を独立国家としての承認すること自体が誤っている。経済制裁の緩和や解除,それに平和協定締結は論外だ。このことをまずは認識すべきである。

2.北朝鮮経済の実情

北朝鮮の名目国内総生産(GDP)は国連統計によると,1兆8,000億円程度で,鳥取県と同じ規模という(3)。 国際社会が一致団結して,北朝鮮に制裁措置を講じてきた影響で,実質GDP成長率は2017年で対前年比マイナス3.5%と推計され, また,2018年については同じくマイナス5%台と予測されている(4)。米国による武力行使の可能性は一時的に低下している間隙を突いて, 金正恩委員長が国内視察を繰り返している模様だが,国内経済の再建は茨の道だ。
党や軍の高級幹部が住む都市部に限定されるが,平壌中心部では2005年に5万ドルのマンション住宅が10万〜20万ドルに高騰。 中国との国境沿いなどの地方都市でもマンションの価格は上昇傾向にあるらしい。もちろん農村部の生活は悲惨な状況となっている。 農村部に住む市民の不平不満は鬱積する一方となっている。軍拡を優先させてきたツケは解消されずにいる。
北朝鮮貿易総額に占める対中国貿易は9割に達する。これが北朝鮮経済の要となる。 制裁の効果は中国次第で浮沈する格好だ。2018年6月の貿易統計によると,中国の対北朝鮮輸入額は対前年同月比で9割も減少しているとされる(5)
中国を筆頭に国際社会が北朝鮮とどう向き合うのか。北朝鮮が本腰を入れて,覚悟を決めて,非核化に取り組まない限り,北朝鮮経済の浮上はあり得ない(6)。 この意味において,韓国が現段階で太陽政策に舵を切るのは誤っている。文大統領は今もって日本を敵視する外交姿勢に終始する。 金委員長にとって文大統領は単たるメッセンジャーボーイに過ぎない。文政権が暴走し続ければ,韓国は国際社会で孤立する。 これは文大統領の外交生命の終焉を示唆する。

(1)『日本経済新聞』2018年9月20日号。
(2)『日本経済新聞』2018年10月6日号。
(3)『日本経済新聞』2018年8月28日号。
(4)『日本経済新聞』2018年10月25日号。
(5)『日本経済新聞』2018年8月29日号。
(6)Financial Times, September 20, 2018.
  



  

前回(「第1回 急減速する中国経済の憂鬱」)はこちら
前回(「第2回 トルコショックと新興国リスク」)はこちら
前回(「第3回 北方領土は永遠に戻ってこない」)はこちら
 


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