改訂版刊行によせて
本改訂版では,主に新型コロナウイルス感染症の対応を中心に新しい情報を掲載することに努めました。初版でも参考にしていた「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」も,新型コロナウイルス感染症等の対応についての情報が追記され,2021(令和3)年8月一部改訂版が公表されています。主に感染症に関する知見については,こちらのガイドラインを参考に修正を加えました。また,厚生労働省から随時更新される「保育所等における新型コロナウイルス対応関連情報」についても,刊行間際まで新しい情報を取り入れることを試みました。
感染状況は日々刻々と変化しており,保育・幼児教育現場では,日々の保育業務に加えて感染対策等の多大なる負担が強いられています。そのような中,子どもたちの成長を見守り,発達を促し続けている保育者のみなさまに心より敬意を表したいと思います。本書でも,現場での工夫について,コラム等でお伝えすることを試みています。 2023(令和5)年4月から,こども家庭庁が設置されるなど,子どもが自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向けて,日本全体が動き出しています。こども家庭庁が分担管理する内容にも,子どもの保健の向上や虐待防止など,本書で学ぶ内容が大きく関連しています。本書が,この先保育者を目指している学生たちにとって,子どもの保健および健康と安全の重要性を理解しつつ,子どもの気持ちに寄り添える保育者になるための一助になれば,望外の喜びです。 このたび,改訂版刊行の機会を作ってくださいました創成社の塚田尚寛社長に深謝申し上げます。また,常に丁寧に編集を進めてくださった西田徹さんをはじめとする出版部の方々に,この場をお借りして感謝の意を申し上げます。
本書のためにご協力くださいましたすべてのみなさまに心よりお礼申し上げます。
編著者 鈴木美枝子
詳細目次
1 子どもの健康と保育の環境
①保育の環境とは
②子どもの健康と安全を守る環境を作る
2 子どもの保健に関する個別対応と集団全体の健康及び安全の管理
3 演習に臨む姿勢
4 子どもの養護の仕方
①だっこ
②おんぶ
1 衛生管理
①主な環境衛生の基準
②施設内外の衛生管理
③職員の衛生管理
2 事故防止と安全管理
①保育中の事故防止の取組み
②施設内外の安全管理
③保育中の事故報告
3 危機管理
①防災訓練
②防犯訓練(不審者訓練)
③引き渡し訓練
4 災害への備え
①非常用持ち出し袋
②備蓄品
1 体調不良や傷害が発生した場合の対応
①体調不良
②子どもと薬
2 応急手当
①主な怪我等への対応
②止血法
③包帯法
3 一次救命処置
①心肺蘇生法の手順
②気道異物の除去
1 感染症の集団発生の予防
①感染経路と予防策
②予防接種
③保育者が知っておきたい感染症
2 感染症発生時と罹患後の対応
①感染症が発生したら
②事故後の対応
1 保育における保健的対応の基本的な考え方
①子どもの健康観察
②健康診断
③身体計測の方法
④発育の評価
2 3歳未満児への対応
①3歳未満児の特徴
②子どもの生活に対する援助
③子どもの生活習慣
3 個別的な配慮が必要な子どもへの対応
①アレルギー疾患
②慢性疾患
③先天異常がある子どもへの対応
4 障害のある子どもへの対応
①発達障害
②その他の障害のある子供への対応
③障害がある子どもへの支援
1 職員間の連携・協働と組織的取組
2 保育における保健活動の計画及び評価
①保健計画の作成
②保健計画の活用と活動の記録
3 母子保健・地域保健における自治体との連携
①母子保健施策等を通じた子ども虐待防止対策
②虐待が発生しやすい要因
4 家庭,専門機関,地域の関係機関との連携
①各専門機関や地域との連携
5 これからの「子どもの健康と安全」
著者情報
編著者
鈴木美枝子(玉川大学教授)
著 者
内山有子 (東洋大学教授/元公立高等学校養護教諭/保育士)
田中和香菜(玉川大学・東京家政学院大学非常勤講師/元府中市公立幼稚園養護教諭)
両角理恵 (東都大学講師/看護師)
これだけはおさえたい!保育者のための「子どもの健康と安全」[改訂版]
鈴木美枝子[編著]
2017(平成29)年に告示された保育所保育指針に合わせて保育士養成課程等の見直しが行われた結果,教科目の目標や教授内容が改正され,新しく『子どもの健康と安全』という教科目が誕生しました。本書はこの教授内容に準拠して作成しました。2017(平成29)年に告示された保育所保育指針において健康と安全の章では,アレルギー疾患への対応について詳細な記述がなされるようになりましたし,保育中の重大事故が問題視されていることを受けて事故防止についても詳述されるようになりました。さらには,各地で災害が多発していることから,災害への備えについても加えられています。これらを受けて,『子どもの健康と安全』では,子どもの生命に関わる内容を深く学ぶことが望まれているといえるでしょう。本書でも,保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版),保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版),教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン(2016年)等,最新のガイドラインからの情報を取り入れることを心がけました。折しも新型コロナウイルス感染症の猛威によって,保育現場も震撼しています。子どもの健康と安全を守ることは,保育者にとって必須のことといえるでしょう。 (はじめにより)